冬休み2010 九州横断紀行 3日目
2010年 03月 19日
阿蘇の雄大な大草原をひとり突っ走るドライブは最高!
アクセルの求める先は、“あか牛”の生産者の井さんの牛舎。
井さんはとにかく阿蘇の産山村に貢献されてきた方です。
プロフィールはこちらをご覧下さい。
井さんの息子さんに牛舎を案内していただきました。
最初になんと言ってもビックリしたのは
“臭く無い!” です。
風邪が吹き抜ける清潔な牛舎。
お話を聞くと、穏やかな口調にいろいろなこだわりを感じました。
とにかく、黒毛和牛の霜降りでは無く
褐毛和牛である阿蘇の在来品種である“あか牛”の
赤身の美味しい牛づくりに余念がありません。
そして、とにかく海外飼料にたよらず
阿蘇の飼料を与える事に大変こだわっていらっしゃいました。
霜降りづくりとは逆行の草を与え、トウモロコシはわずかしか与えません。
(霜降り牛はトウモロコシなどを沢山与えます)
そのトウモロコシも井さんたちはご自分たちで育ててらっしゃるそうです。
でも、、、牛って一日に10キロも食べるそうで、出荷までの肥育日数は約28ヶ月。
牛肉は高い!ってイメージがあるけど、これを見たら当たり前って思います。
只でさえ高い牛肉、
しかも赤身肉は、霜降り牛より決して高くは売れない。
(フィオッキが仕入れる鴨の二宮さんも、餌にこだわり、飼育日数を長くする事からも
同じ悩みを抱えていました。)
霜降り牛より太らない赤身牛は只でさえ利幅が狭いのに。。。
本来の草食動物の姿なのに、、、
霜降り牛より健康なのに、、、
霜降り牛より絶対美味しいのに、、、
あくまでも個人的な意見であり、霜降り牛生産農家さんには
大変失礼であり、申し訳ございませんが
私の個人的主観の「和牛コラム」を書かせて頂きますと・・・
昔から霜降り牛が好きでなかった私。
イタリア修業時代に、当たり前にある美味しい赤身牛に
やっぱり牛の美味しさってこれだよなぁって思ったし
トスカーナ州のキアナ牛の赤身の美味しさに脱帽もしました。
私が自店で今まで和牛のソテーをメニューに載せなかったのは
霜降りは高い割に美味しいとは思えない。
赤身はそこそこ高いのにウケが悪い。
でした。
でも、今回この牛を食べて、改めて思いました。
ウケが悪いのでは無く、認知度がまだ低いのだと。
料理の力、サービスの力で本当の美味しさを伝えて行きい。。。
実際この、あか牛のモモ肉をお出ししたところ、
この美味しさをすんなり理解し、感じて下さる方が多くいらっしゃいました。
こうした真の美食家がいてくれる事は大変心強い。
確かに、固い=美味しく無い は分かります。
只これからはトロけるや、ふんわりは
デザートや造り上げる前菜で感じて頂きたいカテゴリーであり、
肉や魚、野菜の美味しさを味わって頂く際には
その個性をしっかり感じる素材を選び、ダイレクトに味わって頂きたい。
そして作る意味は「美味しい」や「幸せ」の他に
「伝える」、「残す」もあるな、と思う最近であり、
だからこそ作る側として、その生態系の本質的な部分も
知っておかなければならないと思います。
ほとんどの食材はビジネスという
工業製品化された食べ物になっているこのご時世で
何かしらのバランスが崩れて行き、本当に美味しい物が
食べられなくなる時が来るのでは
という危機感を感じる昨今。
「サービスと時間」があり「クオリティー料理」という「価値」を
楽しんで頂けるレストランには
こうした認知度を高める可能性が凄くあると思うし
それもまた我々の仕事の使命の内の1つに思います。
まぁコラムはこれくらいにして・・・
牛舎を案内して下さった井さんの息子さんです。
この後私は、恩師である原田氏のお店に行く為に
熊本市内へ向かったのですが
その道中で井さんにお会いし
お話しさせて頂く事が出来ました。
74歳になられる井さん。
考えられないくらい、前向きな方でした。
農家が当たり前の生活が出来ないくらい大変な現状の改善をベースに
ネガティブワードはいっさい無しに
こうして行くべき!こうして行きたい!
を強くお持ちでいらっしゃいました。
そしてそのお考えは深く本質的なものであり確実に『あたりまえの幸せ』
という大切な問題を切実な思いで、背負っていらっしゃいました。
なんだろう阿蘇・・・
私には、とんでもなく刺激的な二日間でした。
良く分からないけど、パワースポット???
熱い気持ちのまま熊本市内に入り、原田氏と再会を果たし
美味しい料理と共に飲んだスプマンテ。
ラジエターの様に熱いハートを冷ましてくれる
そんな1本でありました。