ADESSO nu,6 僕の大好きなイタリア料理

年内中に沢山のコラムを書くはずだったのですが
なんだかんだバタバタしている間にもう師走。

という事で、一番ナチュラルに核心的なお題をあげてみました。




先のコラムADESSO nu,2(レストランの評価)でも書きましたが
昨今、様々なイタリア料理が増えました。
まさに星の数ほどのイタリアン。

で、最近はあまり聞かれなくなりましたが、10年前は
「イタリア料理って、フランス料理とどう違うの?」
という質問を良くいただいていました。
「フランス料理みただねぇ」
と言われる事もありますが、これはその方の褒め言葉だと思うので
ありがたく思うようにしています。

それは、私の中に“イタリア料理の料理人”のほかに
“西洋料理レストランの料理人”が居るからだと思います。

イタリアでの修業時代の3件の二つ星リストランテのスケールは
かなりのカルチャーショックで未だに憧れています。

おもてなし料理スピリットではイタリアの三つ星リストランテは
ヨーロッパ最高峰のおもてなしを求めており、二つ星もスピリットは同じ物でした。

ですので、お皿の上のストーリーやテイストを考えず
見た目で判断すれば、リストランテの料理は
ヨーロッパ内での料理の国境はあまり無いように思います。

ベルギーもフランスもスペインも、そしてイタリアも皆、素材を大切にし
それをそのもの以上に仕立てようとし
いわゆる “見た目” でもより美しく仕立てようとしています。

日本では世間一般的には、こういった料理はフランス料理なので
当店でお食事された方が「フレンチみたい」というのは
上に述べた仕事ができていたのかな、と思う訳です。


では、なぜ僕がフランス料理では無くイタリア料理が好きなのか。
(食事に行くのはフレンチ大好き^^)


それは『パスタがあるから』

・・・

これだけ書いといて、その一般的な答えか・・・
と思われるかも知れませんが、
10年間、真剣にこの仕事と向き合ってきて、
少しづつ、この偉大な料理のアイデンティティがわかってきたように思います。

イタリア料理が多くの方に好まれている理由は
『美味しいから』だと思うのですが
私はこの『美味しい』に他のジャンルよりかなり不変性が強く思い
そして、そこに偉大な食文化を感じます。

そんな素晴らしい料理がずっと伝わってきて、
ついには地球の裏側でも当たり前に楽しまれるようになったのは何故でしょう。

『簡単だから』があると思います。

この『簡単』に作れるから、毎日、毎日イタリアのマンマは
畑から大地の恵みを摘み取り、生き物の恩恵を頂き、
料理をし、家族が喜び、また料理をして、今に至っているのではないでしょうか。
(実際、イタリアのレストランのシェフは女性が多いです)

私は今、料理教室で
「難しく考えないでください。材料を計ったり、何度も丁寧にこねたり
大変な事はやめましょう。もちろんお客様のおもてなし料理の時は別ですけど
パートナーたちは愛の料理を毎日食べたいはず。
楽しく毎日作るには、簡単で美味しいのが一番!それがイタリア料理です!」
と言い切ってしまっています^^

日本でのお菓子のレシピはやたらと細かく表記されている事が多いのですが
実際イタリアではかなり大雑把です。

だからといってマズい訳なんて無く、しっかり美味しいです。
新しいサプライズ性が無いだけです。
これが我々にはケッコー驚きなのですが^^

『簡単で美味しい』は実は奥深いです。
じっくり乾燥されたパスタ、
それにかけられる、あの風土から生まれるチーズ、
丁寧に摘み取られ清澄されたオリーブオイル、
その地に伝わるサラミやハム類の保存食、
自然の恩恵からなる絶妙な構成の料理、
その料理にバッチリ合うその地場のワイン。

画像はフィオッキ愛用のシチリア島のカステル・ディ・レゴ社の
エキストラヴァージンオリーヴオイルのノヴェッロ(ヌーヴォ)です。
(このオイルについてはまたご紹介します!)
ADESSO nu,6 僕の大好きなイタリア料理_c0130206_1214178.jpg
とんでもなく美味しいイタリアの産物の一つです。


これがあるから
『簡単でも美味しい』
だし
『そのもの自体が素晴らしいので、やりすぎたら美味しくなくなる』
がイタリア料理、そしてパスタの素晴らしさなのではないでしょうか。

で、
我々も『簡単に作れる料理ありき』のところがあります。
しかし、皆様(26席)からお金を頂き、喜んでもらうには
簡単というのは不変美味の世界だけです。
いわゆる、手を加えすぎると、そのものの価値が薄れてしまうものは
簡単のまましかやりようが無く、それを大事に守る訳です。
お金を頂く以上、できる限り頭を絞り、手を掛けなければなりません。
(時として経験がこれを邪魔をし、
キャリアよりセンスが大事だと思わされる時があります。)

僕がイタリア料理が好きなのは、おもてなし料理と食文化からくる
本質的な美味しさが共存しているからです。

この美味しさが僕を突き動かしてくれます。

僕が今思うイタリア料理の魅力とは、それはマンマが家族のために
貧しくとも知恵を絞り、食卓への情熱を守り続けた『愛の料理』です。
by ryo_horikawa | 2010-12-18 12:14

祖師ケ谷大蔵     イタリア料理フィオッキホームページ       http://www.fiocchi-web.com/main.html是非ご覧ください


by ryo_horikawa